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「わ。雨かよ」
スーパーから出てきた私とナルちゃんは、目の前に広がる光景にため息。
『今日は厚い雲に覆われますが、雨が降る心配はございません。お出かけにはちょうどいいかも知れませんね。』
と確かに朝のニュースで言っていた新人らしき可愛いお天気お姉さん。
どこが心配いらないのよ。
気象予報を信じていたであろうサラリーマンや主婦、学生たちが慌てて走っていくのが目に入る。
…でも仕方ないか。
新人さんだもんね?
可愛かったし許してあげるよ。
なんて頭の中で勝手に決め付け、上から目線の偉そうな私。
「傘一本でいーよな? 家にあるからあまり増やしたくないし」
そんな私とは違って、淡々と話を進めるナルちゃんは、今店の人が店頭に持ってきたビニール傘を手に取って私の方に振り替える。
私は頷きながら傘に目を向けた。
しかし次の瞬間、吹き出しそうになって慌てて視線をそらした。
「な…なんでその色?」
視界に傘が入らないように必死にナルちゃんの目を見て、笑いを押し殺して聞いてみる。
だけどやっぱり堪えきれなくて、とうとうナルちゃんの目すら見えず顔を下に向けた。
「珍しくない? ピンク」
それに気付いてないのか、気にしていないのか。
ナルちゃんはどこか嬉しそうにそう言って再び店に入っていった。
「………」
……ピンク、ねぇ。
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