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黒い煙を見つめて、隼人が瞬に大きな音を出してはいけない様に静かに囁いた。
「大丈夫か?こっちは全部片付けた。美咲も理緒も無事だ…親父さんは…あの中か。」
煙の中からはNo30の狂喜の声が聞こえてくる。
「ハハハ!やったぞ、ついにやった!これでもう私に歯向かう愚か者は居なくなる。私こそが…支配者だ!」
だが、その笑いは突然恐怖へと変わった。
「ヒッ…何をするんだ、やめろ!おい!お前は私の下僕だ。私の言う事を……ま、待て、やめっ…ギャアァァァ!!」
恐怖の悲鳴は骨の砕ける音に混じって大きく響いた。
次第に黒い煙が晴れて包まれていたものが露になった。
瞬は氷の手で心臓をわしづかみされた感覚がした。隣では隼人が息を飲んでいた。その顔にはただひとつの感情しか映っていない【驚愕】の感情しか…
「な…んだよ…こんなモンにまで…そんな…ウソだろ……」
隼人が絞り出した言葉はやはり驚愕で埋め尽くされていた。
そこに居たのは…その姿は…
一言で言うならば、それは…【悪魔】
赤黒く光る不気味な体、鋭く伸びる凶悪な爪、むき出しになっている犬歯、そこから垂れる真っ赤な血…おそらくその血の主は…
【悪魔】は目を開いたその目は…深い、深い、暗い目……瞬は目を合わせただけで、全てを飲み込まれる様な恐怖が体中を走った。
悪魔と化した瞬の父は、まるで初めて物を見るかの様に瞬と隼人を見つめた。
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