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「父さん……もう…父さんじゃ…ないの?…もし、まだ、父さんの心が残ってるなら…お願い…返事して………俺は……独りになるのは嫌だ!!」
涙で目が霞みながらも、瞬は叫んで拳を強く握り締めた。我慢しているのに涙は溢れてくる。
ふと、何かが瞬の手を包み込んだ。
顔を上げると、美咲が瞬の手をとって微笑んでいた。
「大丈夫、瞬のお父さんはきっと大丈夫…だから、信じよう…」
美咲の手に力が入った。能力を使ったのでその手は冷たかったが、とても、とても暖かかった。
「美咲…ありがとう。」
再び瞬は悪魔へと目を向けた。
その時…悪魔の闇に染まっている目に微かに光りが灯った気がした。気のせいかとも思ったが光は徐々に大きくなってハッキリと分かるようになってきた。
しかも、光が大きくなるにつれて悪魔が苦しみ出した。
そして、その目に完全に光が宿った時、悪魔は苦しむのを止めて急に穏やかな表情になった。
瞬と美咲が呆然と見ている中、隼人の介抱をしていた理緒が、
「あれ?急にどうしたの?…殺気が消えた?」
「まさか…瞬の親父さん?」
寝転んでいた隼人が起き上がって理緒が止めるのも聞かず立ち上がった。
悪魔…瞬の父は全員を見回して、最後に瞬を見、話し始めた。その声はさっきまでとは違って優しい口調だった。
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