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相手の男は電話を切ったあと、彼女がこんな風に涙を流していることをきっと知らない。
しかし、僕には彼女を抱きしめることも慰めることもできない。
彼女が求めているのは僕じゃない事を実感させられる。
彼女を怒らせたり、泣かせたり、笑わせたりできるのは、きっと電話の向こう側にいる彼氏だけなのだ。
胸の奥がチクっとする。
彼女の歩き出す気配がしたが、僕はもう隠れる気もなかった。
彼女は僕なんかには全く気付かず、パタパタと走って戻っていく。
初恋と失恋をいっぺんにした僕は、いつまでも彼女の走っていく足音を聞きながら自分の無力さを感じ、動くことさえもできずその場に立ち尽くしていた。
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