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声がかすれて出なかった。
「今なんて?」
「だから、死んじゃったの。高校やめるちょっと前にね…」
あまりに突然で言葉が出てこない。
「やだぁ、もう。そんな顔しないでよ。」
「あ…や…」
「何も言わなくてィィよ。ごめんね。田崎君優しいから、つい甘えちゃった…田崎君?」
「あ…うん。」
気のきいたこと一つも言えない自分がもどかしい。
「ホテルまでそんなに遠くないからここでいいよ。ありがとね」
「や、いいよ。もう少し送らせて」
「でも…」
「ちゃんと送りたいんだ!」
思わず語尾が強くなってしまった。
なんかもう言葉では言い表せなくて、もどかしくて、情けなくて、でも今彼女と別れたくはない。
僕は彼女の手をとり歩き出す。
「あ…田崎君?」
大丈夫。
何もできなかったあの頃とは違う。
上手く伝わらなくても、下手くそでも、不器用でも、カッコ悪くてもいんだ。
僕は僕にできることをすればいい。
僕は今でも彼女が好きなんだ。
今、彼女が求めてるのは僕で、それがたとえ代わりだとしても、これは僕にしかできないのだ。
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