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日本の関東に位置する一つの街。
名を『平柄市』という。
人口は八十万を越え、比較的栄えている大規模な街だが、首都ほど巨大な建物が立ち並んでいるわけではない。
様々な“色”が点々と存在し、混じり合うキャンパスのような街だ。
ある地域は、ビルが建ち並び、人々が賑わう場所――灰色。
ある地域は、清い水が流れている川や、鳥のさえずりが聞こえてくる森など、自然が豊かで心休まる平穏な場所――青色、緑色。
地形が穏やかであり、全面的に平ら。その為に人々が在住しやすく、街の至る所に居住区が設けられている。山々のような凹凸は北の方角にほんの少しある程度だ。
街は東の方角に一つ、西の方角に一つ流れている大きな河に挟まれ、南の方角は海に面している。その為、他の街との境がはっきりしている特徴がある。
周りの市との境は、その二つ河を基準にして分けられており、他の市との繋がりのため河を架ける大きな橋も多い。日々数え切れない数の自動車や鉄道が境を行き来して、情報を運んでいき、または運んでくる。
もともと経済的に環境が良いため、平柄市はこれまで栄えてきた。
沢山の色を維持し、そして組み込み、付け加えてきた。
人々がこの街を“生きる場所”として栄え、
そして、この街自体も人々によって“生かされていた”。
バランスが保たれていたのだ。
均衡的に、合理的に、平和的に、平穏的に。
この街は生命の呼吸を繰り返し、“生きていた”。
そんな街の、寒さに身を震わすような冬のある日に、
何気ない、
いつも通りに均衡的で、
合理的で、
平和的で、
平穏的になるはずだったその日に、
“事”は起きた。
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