三崎 栄司

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***  俺はたまにサッカー部に勧誘されたりする。  体育のサッカーをした後や、ただ練習風景を見ているだけで「栄司、サッカー部入れよう」と声をかけられる。  それほど今のサッカー部は人材に困っているのか。  どうやらそうらしく、俺というプレイヤーを喉の奥から欲しがっているらしい。  弱いわけではないらしい、うちのサッカー部は。  じゃあ何故俺を求めるのか。大方、勿体無いからだろう。  ボールだって高い弾道で蹴れるし、相手をドリブルで抜き去る技術を持つ俺が帰宅部だということが実に勿体無いのだろう。  自分でもサッカーの技術や知識については自負しているつもりである。  しかし毛頭入るつもりは無い。  理由は簡単。  俺の性格がよくわかっていれば、そんな理由は誰だってわかる。  それは、顧問がとても鬱陶しいからだった。練習風景を見る限り、あの喚き散らす姿はないだろう、といつもため息を吐く。  とにかく面倒なのだ。あんな人の下でサッカーなどやりたくない。  あれこれ大人にとやかく言われるのを俺は好まないから、俺は入部しない。  これが“第一の理由”。  そして“第二の理由”。  練習が面倒だから、だ。  サッカーは好きだ。  だけど、好きイコール練 習も大好きというわけでもない。  毎日毎日練習に出るのがこの上なく面倒なのだ。  自分が好きな時に。  自分のタイミングで。  やりたい時にやる。  それが俺の中のポリシー。  つまり。俺の性格はもう単純明快。  完全な自己中だ。  その辺には自分でも理解している。  それが幸いで、自分で理解できていなかったら、それこそ致命的だ。  そして、そんな自己中もちゃんと心がけていることはある。  人に迷惑かけないようにする。  しかし、どうしてもかけてしまう時がある。  その時は、その時だ。  そうやって過ごしてきた。  未だにそれは直らない。  
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