初日――開幕

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 僕は、空楽さんの後に続いて部屋を出た。  本当に、食べ物に命を賭けてるんじゃないのか、この人? 「空楽さん」 「何だい?」 「夕食が完成しても、普通は招待客が全員揃うまで食べませんよね? マナーとして」 「私に、ルールを守れと言うのかな?」  ……問題発言だった。  やっぱり、言うだけ無駄らしい。  僕は関係ない。  僕はこの人の付属品だ。  この人が何かをやらかしたって責任は負いません。  周囲の人達がフォローしてあげてください。 「手段としては、来々ちゃんに何か作って貰う方法もあるしね」 「何でも来々さんを出すのはやめましょうよ」 「だって――ああ、君は知らない訳だ。なら、仕方ないけどね」  空楽さんが言った言葉が気になったが、本人は気にしていない様子で階段を駆け降りた。  僕も、見失わない様に続く。  どうでもいい時だけ活発な奴め。  僕は、空楽さんに追い付くと、歩調を合わせて歩いた。 「ところで、空楽さん」 「ん? 何だよ明子」 「何で、呼ばれたんです?」 「? ああ――」  少し考える様な仕種をした後、納得した様に呟いた。  そして、答えた。 「キールワークだからさ」
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