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◆ ◆
僕と名張さんは、談話室に到着した。
向かい合ったソファーを挟む様にテーブルが置かれ、深い青色の絨毯が敷かれている。
壁はレンガで出来ている様で、暖炉もしっかりと備えてある。
古い建物だとは聞いていたが、レンガや絨毯には汚れ一つ、染み一つ見当たらない。
管理がしっかり行き届いているのか、ただ、異常なのか。
その談話室のソファーには、先客が座っていた。
「ん? ああ、少年。実にいいタイミングだ。うんうん、素晴らしい」
僕は、先客の一人に頭を下げた。
「ちょ、調度、紅茶を頂戴するところなんだけど、あなたもどう?」
「いえ、実はさっき頂いたばかりで……」
僕は、もう一人の先客の誘いを丁寧に断る。
安藤沙絃。
鳥分三代。
二人との自己紹介は、すでに終わっている。
――と言うのも、この不島屋敷に到着した時、先客であった二人と出くわし軽い自己紹介を交わしたのだった。
名前ぐらいしか聞いていないけど。
「よいしょ。横、失礼します」
名張空楽はそう言って、三代さんの隣に座った。
初対面の人間でも馴れ馴れしいのがこの人の凄い所。
いや、悪い所か。
僕は、安藤さんの隣に腰掛ける。
向かい合って座っていた安藤さんと三代さんの隣に、空楽さんと僕が向かい合う形で収まった。
「えっと、安藤さんだったかな? お二人で話しをしていた所に割り込むのは悪いんだけど、仲間に入れて貰えませんかね?」
愛嬌たっぷりに笑いながら、空楽さんが言った。
「構いませんよ。問題も問題も問題なんてありませんからね。実に素晴らしい限りです」
黒いスーツに黒いコートを羽織っているためか、異様な存在感を示している男性。
安藤沙絃さんが言った。
実際は二十代後半ぐらいなのだろうが、服装の影響なのか年齢を正確に判断するのは難しい。
服装に反して髪は茶色だ。
「ところで、お二人はどういう間柄なんでしょう?」
清楚なワイシャツと、黄色いチェックのスカート姿に緑色のフレームの眼鏡を掛けた女性。
鳥分三代さんが尋ねた。
清楚と言うより飾り気のないと言う感じだ。
ただ、長い金髪が目を引く。
「ああ、気になります? 助手ですよ助手。ついつい連れて来ちゃいまして」
にこにこと笑いながら、空楽さんが答えた。
ついついって、強引にだろう?
「助手……学者ですか。何の研究を?」
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