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全く、憂鬱になる。
僕は、溜め息をしながら頭を抱えた。
あの人と一緒では、例え社員旅行の名目であったとしても気が休まる筈がない。
何を理由に社員旅行だと言うんだ?
あれは、会社ではないだろう。
――と、旅行(と言う名目)だというのに、僕は憂鬱だった。
前向きに考えるのは、無理がある。
コンコンッ――
ドアがノックされる音がした。
「――ああ、はいはい」
僕はソファーから腰を上げると、ドアまで早足で向かった。
僕がドアを開くと、手にお盆を持った一人の女性が立っていた。
お盆には、ティーポットに加えてティーカップが乗せられていた。
「えっと、来々さん――でしたよね? どうしたんですか?」
僕は、少し戸惑う。
「いえ――先程は海釣様が一人で荷物を運んでいらしたので、喉が渇いたのではないかとお茶をお持ちしました」
やわらかい口調で、来々さんが言った。
「わざわざありがとうございます。一杯、頂けますか?」
「では――」
そう言って、部屋に入るとお盆をテーブルに置くと、カップに紅茶を注ぎ始めた。
調度、喉が渇いていたのだ。ありがたい。
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