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さて、これからゆっくりと紅茶が頂ける訳だが、気を休めると言う意味でややこしい問題は最初に解決しておくとしよう。
僕は今、とある島を訪れている。
日本海に浮かぶ小さな島――愚集気楽の島。
名家の持ち物の一つである無人島。
いや、それは一昔前の話しらしく、今は少ないながらも無人ではない。
『ぐずみきらのしま』と言う変わった読みが少しばかり気になるが、僕の個人的な疑問なのであまり関係ないだろう。
僕にお茶を入れてくれているこの人は、宇田川来々。
この愚集気楽の島の中心に位置する不島屋敷――の家政婦さん。
――と、つまり、僕はその不島屋敷の一室に居ると言う訳だ。
「どうぞ」
そう言って、来々さんが僕の前にティーカップを置いた。
「どうも」
僕は紅茶を一口飲む。
美味しい紅茶だ。それに、喉が潤う。
「荷物を運ぶくらいなら、形間さんがやってくれたのではないですか?」
来々さんが、間合いを計った様に言った。
たった一人で二人分の荷物を持って来たのが不思議なのだろう。
「いえ、僕がお断りしたんですよ。特別に大切な物が入っている訳ではないんですけどね」
「ああ見えても、形間さんは体力がありますから、お気遣い頂かなくとも大丈夫でしたのに」
「気を遣った訳でもないんですけどね……」
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