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「いや、呼んだ覚えはないんですけど」
「まあまあ、君の疑問を解決すると、部屋に戻る途中に来々ちゃんに会ってね。君が捜していたと伝えられた訳だよ」
「まあ、そうだとは思いましたけどね」
別に、そんな事だろうと思っていた。
何をする時も気まぐれな人だ。
廊下を歩き回っていたのも、部屋に帰って来たのも、なんとなくだろう。
「それで、私に何か用かな?」
グレーの帽子を頭から取りながら言った。
身長は、180前後の長身。
肉付きは普通と言った感じだか、身長のせいか細く見えてしまう。
肩口で散切りにしてある黒髪に、帽子と合わせたグレーのスーツ。
渋い感じを漂わせながら、名張空楽が椅子に座った。
「用事は、別にないですよ」
紅茶を流し込む様に飲むと、僕は答える。
「なら、いいんだけど。せっかく旅行に来たんだから、楽しんでくれよ」
「何が旅行ですか? あんたの事情に巻き込まれたんですよ」
原因が楽しめとか言うな。
「私の助手なんだから、ついて来て当然さ」
「だから、旅行じゃなくて仕事と割り切ってついて来たんですよ」
本音を言わせて貰えば、別に来たくはなかった。
助手という立場を指摘され、断る事ができなかっただけの話しだ。
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