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「私だって、好き好んで来ている訳じゃないんだけどね。話したと思うけど、青跨、特に天見には借りがあるんだよ。招待されたら、断れないだ」
「仕事もしてないから呼ばれるんですよ。スケジュールすかすかじゃないですか」
この人との付き合いは、もう一年近くになるのだが、その間に働いている姿を見た事がない。
本来、名探偵などと言う者は、ありふれて存在するものでもない。
それは、空楽さん本人がそう言っているし、僕もわかっている。
名張空楽が警察を差し置いて事件を解決する事など皆無だ。
普通の探偵は、ペットや人捜し、浮気調査など地味な上に犯罪じゃないかと思う仕事も少なくない。
犯罪者ってのは、探偵のために造られた言葉だよ――本人がそう言っている。
しかし、そんな小さな仕事すら、やろうともしない探偵が、この名張空楽だった。
仕事の依頼など来ないし、仕事をする気もない。
助手と言いながらも、僕がやっているのは、基本的に雑用。
捜査などしない。
推理などしない。
仕事など――ない。
それだというのに、毎月給料はしっかりと貰えている。
何処から湧いているのだろう?
案外、そういった所が青跨家との繋がりなのかもしれない。
僕は、ひそかにそう思う。
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