ありきたりな風景

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「ああ…、もう行かないと…」 僕は腕時計を見て、呟いた 「そうか…、頑張れよ」 そう淋しげに呟いたのは、大学時代からの腐れ縁の薬芝 遊夜(やくしば ゆうや)だった 結局、見送りに来てくれたのは、こいつだけだった 「…杏美(あんみ)は来なかったな」 「あぁ、友達と約束あるらしいから」 「…お前、それでいいのか?」 「………。まあ、これで三年間は気を使わずに済むかな」 「ハハッ、そうかもな。大学病院のお姫様と付き合うのも大変だな」 「もう、馴れたよ。付き合う時から、あいつの我が儘だったからな。…じゃあ、行くわ」 「おう、頑張って来いよ、特別研修」 「お前もな。薬剤師の試験近いんだろ?」 「んなもん、ちょちょいのちょいよ。俺を誰だと思ってんだ?」 「だから心配してんだよ」 「ヒデェ…!お前なんか、とっととアフリカに行っちまえ!」 「悪い悪い。…またな」 「…またな」 …どこにでもある風景 それでも、僕達にすれば、重要な一ページだった
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