晴れのち曇り

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首に絡まる細い腕、耳にかかる息。そして、背中に当たる感触……。 この、これは、こいつはっ……! 京介は鳥肌をたてて即座に包囲を脱する。顔は真っ青だ。ちょっと吐き気さえしてきた。 「ふふふ……相変わらず京ちゃんは恥ずかしがり屋さんだねぇ」 「う、うるさいっ!いきなり抱きついてくるなっていつも言ってるだろーがっ!」 「えーなんで?」 「なんでもっ!」 京介は再び抱きつこうとしてくる腕をぴしゃりとはたき落とす。 仲がいいと言われればそれまでなのかもしれない。コミュニケーションの一環だと思えばたしかにそうなのかもしれない。 でも、でもだ。これは間違いなくそんな領域をこえている。じゃなきゃ抱きつくなんてありえない。 そう。優子は……完全なブラコン姉貴なのだ。 「むー京ちゃんのいじわる~」 「うわっ!だからやめろっ!寄るな!来るな!近づくなっ!……ひぃー!抱きつくなぁー!は、な、れ、ろぉー!」 その声はもう悲鳴に近かった。
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