晴れのち曇り

2/10
前へ
/79ページ
次へ
  <1> 私鉄駅から徒歩10分。そこは二階建てのごく普通の一戸建てだった。 叶野京介は朝食を作る手を一旦休めて、キッチンの脇にある窓を開ける。 僅かに湿気を含んだ風が室内に入ってくる。その後、見えてきたのは澄み渡った綺麗な青空。 「よし、いい感じだ」 小さくガッツポーズ。 ここ最近降り続いた雨はようやく上がったらしい。見事な洗濯日よりだ。 これでたまった洗濯物もようやく干すことができるだろう。一部、部屋干しにしたのもあったが……やっぱり洗濯物は外で干すのが一番だ。繊維も気分もすっきりする。 ちょっとだけ感動した後で、再び朝食作りに視線を戻す。 カリカリに焼けたベーコンエッグを皿に移したところで、セットしておいたトースターがパンを吐き出す。軽くバターを塗って、コップにミルクを注いで準備完了。 テーブルに並べ、椅子に座る。 気分のいい朝は朝食も一段とおいしそうに見えるから不思議だ。 京介は律義に手を合わせて―― 「いただきま……」 ジリリリリ、リ……ガツンッ!…… 「っ…………」 ――リビングの天井、二階から聞こえてきた異様な音に、口を開きかけたまま一時停止。 ……そうだった。まだやることがあったな……。 思い出して「はぁ……」と一つため息をつく。 アツアツな朝食をほうばることなく、京介の口は虚しく閉じられた。
/79ページ

最初のコメントを投稿しよう!

164人が本棚に入れています
本棚に追加