晴れのち曇り

4/10
前へ
/79ページ
次へ
さっきの音はこの目覚まし時計の音だったのだ。ジリリリリと鳴って、投げ捨てられ、壁に当たり、ガツンッ!……と。かわいそうに。 「ぐ……また買い替えか。奮発してせっかく丈夫なやつ買ったのに……ちきしょうっ……」 思わず出た呟きは、しかし誰にも届かない。京介は買ってからわずか一週間で昇天してしまった時計――『ぜんぜん壊れなーい』というキャッチフレーズで売っていたのだが……嘘だったようだ――を恨めしく眺めるが、きっと怒りを向けるべき相手はそれじゃない。 京介はまず窓際へ行き、カーテンを開ける。そして窓を背に、まさに後光のごとく朝日を背負いながら、キッと鋭い眼差しを部屋の奥地にあるベッドへと向けた。
/79ページ

最初のコメントを投稿しよう!

164人が本棚に入れています
本棚に追加