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だが、京介は一瞬たじろいだものの視線を外してすぐに平静を取り戻す。
毎度の事だ。さすがにもう慣れている。といってもひきつる顔は抑えられないが。
京介は思い切ってベッドに近寄るとそいつの耳元で叫ぶ。
「起きろー!」
ガクガクと肩を揺らしながらひたすら叫ぶ。
「あ!さ!だー!ほら起きろー!起きろって!」
叫ぶこと10数秒。これだけやってまだ「……ん~」と微妙な反応。くそ。だが諦めてはいけない。もう一息だ。
「起きろっーー!」
トドメの一声。
最大級の一撃にしてようやくそいつは動いた。
「ん~……」
目を半分開けて上半身だけむくっと起き上がる。
「はぁ……やっと起きたか……。おい、とりあえず服を――」
「ん~……」
そして、ススッと細い腕を伸ばしてきたかと思うと、
「っ!?」
「ん~……」
驚くべき速さで京介の首へと腕を絡ませ、そのままベッドへと引きずり込もうとする。
ヤバイ。
そう感じたのは一瞬、気づいた時にはすでに手遅れだった。前かがみの態勢だったため、ろくに踏ん張ることも出来ず、引き寄せられるままボフッとベッドに墜落。
ほにゃりとした感触と人肌の温もりを直に感じて……
「なっ!?」
硬直。
京介はベッドの上でいつの間にか抱き込まれていた。それはもう抱き枕を抱えるかのように。
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