夜道

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外は涼しかった。 辺りは静まりかえっていた。 僕は自転車にまたがり、ペダルを漕ぎはじめた。 夜道を自転車で走りながら、月明かりに照らされていた。 改めて感じた。 やっぱり僕には居場所がない。 この感情はフラれたからとかそういう簡単なものではない。 しかしそれがなんなのか未だに分からない。 もうじき真実に指定された場所に着く。 きっとこれが最後になるだろう。 最後に何を話そうか。 僕はそんな事を考えながら漕ぎ続けた。 指定された場所に着いた僕は、辺りを見渡しながら自転車から降りた。 ここは住宅街から少し離れた場所にある、小さな公園。 周りには木々がたっており、公園内には電灯が何本かたっていた。 ブランコと砂場と滑り台とベンチとがある、ごく普通の公園だ。 公園は薄暗い。 時折寂しくそよ風が吹きつける。 ベンチには真実が体育座りでうずくまって座っていた。 「真実。」 言うと真実はゆっくりと頭を上げた。 寂しそうな顔をしていた。 今まで見たことのない表情を浮かべて、こちらを見ていた。 僕は隣に腰を下ろした。 「なに?こんな夜遅くに呼び出して。」 風が手首の傷口にあたり、ぴりぴりと痛む。 真実はゆっくりと口を開いた。 「あんたに話があるから呼び出したの。」 「だからなんだって、その話って。」 真実は不安気にこちらを見ながらこう言った。 「最近元気ないよね。どこにいてもさ。」 「そうか?いつも通りだと思うけどな。」 真実はじっとこちらを見ながら言った。 「いや、それは嘘だ。無理してるのがバレバレだよ。いつも一緒にいたんだからそれぐらい分かるって。」 僕は心が動揺していた。 誰も僕の存在など気にしていなかったのに、幼なじみの真実は僕のことをちゃんと見ていてくれた。 たった一人でも。 この世に僕の存在を認めてくれる人がいた。 それがたとえ真実であっても、僕は嬉しかった。
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