暗がり

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心が揺れ動くのがよくわかった。 死のうとしていた自分が、少しずつ遠のいて行く。 たったあれだけのことで、こんなに心が揺れるとは、人間とは弱い生き物なのだということを実感した。 真実が言った。 「何か隠してるんだったら言ってよね。話ぐらいは聞いてあげられるから。」 その一言で、僕は真実に心を開きかけていた。 まさかあの真実にこんなことを言われるとは、思いもしなかったからだ。 いつもは僕にちょっかいを出したり、僕が言ったことは素っ気なく返したり、やさしくされたことなど一度もなかった。 僕は手首について少しだけ話してみた。 真実は無表情でこう言った。 「あんたバカじゃないの?」 その一言で、やはり僕のことを本当は分かっていなかったと思った。 しかし、それは僕の思い違いでしかなかった。
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