独り

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手首にまわしたカッターを伝って、赤い血がひたひたと渡ってくる。 少し痛かったが、そんなことは、これからのことに関係なかった。 これから手に入れられるものと比べたら、全然我慢できる程度だった。 ひたひたと流れていた血が、次第にぼたぼたと音を変えていた。 出血の量が増えていたのだ。 しかし僕は何も感じなかった。 下では相変わらず母さんと弟が、僕がしていることを知らずにいる。 僕は解放されると思うと、とても嬉しかった。 しかし、よく分からない感情がそこにはあった。 初めて味わう感覚。 なんというのか分からない。 でもそんなことはこれからのことになんにも関係ない。 僕はまた強くカッターを引いた。 今度は少し痛かった。
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