探し物はいらない時に限って見付かる

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銃を持つ手が震える。 木の下にいた少年と 今目の前で泣いている少年と 何故2人は泣いていた? 私が泣かせたんだ。 そして 自分の姿も重なる。 両親を殺したあの日の自分が ICE REAPERと呼ばれるようになったあの夜の自分と 「…お姉ちゃん。」 少年が震える声で聞いた。袖で涙を隠すように拭う。 「…何だ?」 「お姉ちゃんは… 何で泣いてるの?」 泣いている? …私が? 頬に手を当てると濡れていた。 「…何故私は泣いている?」 春風は呟く。 「お姉ちゃん…本当はこんな事したくないんでしょう?」 少年は静かに言い聞かせるように言った。 「……。」 「本当は、家族が欲しいんでしょう?」 「…何故そう思う?」 「僕達の事見て泣きそうな顔してたから。」 「…そんな顔していたのか?」 春風は涙を拭いながら言った。涙は止まらない。ましてや泣いたこともない春風には止める術など分からない。 「うん、…お姉ちゃん…もうやめよう?」 「…無理だ。」 「止めなきゃ…お姉ちゃんが壊れちゃうよ?」 「…黙れ。」 「お姉ちゃんだって本当は止めたいんでしょ?」 「黙れ!!!!!!」 春風は耳を塞ぎうずくまった。 春風の中で何かが崩れ落ちているのが分かる。 「人殺しとか最低。」「お姉ちゃんは泣けないの?」「お前は私の命令に従っていればいいんだ。」「春ちゃんならいつか分かるよ。」「生きる意味を見つけろ。」「お姉ちゃん、本当はこんな事したくないんでしょう?」「逃げるな。」 「もう…止めてよ。」 春風を暖かい物が包み込む。 「…お姉ちゃん。」 少年が春風を抱き締めていた。春風の肩が熱くなり少年が泣いているのだと気付く。 「憎しみは…憎しみしか生まないんだよ?」 春風が顔をあげると少年と目があう。少年は泣きながら笑う。 「お父さんが言ってたんだ。」
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