なくしたことば

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 はてさて、紳士淑女の皆様お立ち合い!  これは世にも奇妙で、そのじつ何もない当たり前の話し!  神と人間の少し奇妙な話し。  え? お前は誰かって? オイラはラック、黒猫のラック、訳あって使い魔をしてる。  ほんのちょっと前までは、聖獣だったのに……無茶をしたご主人様のせいで、飼われていたオイラはめでたく使い魔に転落!  勘弁してほしいもんだねホントに!  ご主人様は何をしたって?  それはもう、無茶苦茶と言うか、お子様というか。  話しは数日前になる。 「ルーン、お前は自分が何をしたのか分かるか?」  立派な髭をたくわえた主神が、厳かに言う。  言われた当の本人はむっつりとした面持ちで、あまり反省の色は見られない。  ルーンと呼ばれた少年――オイラのご主人様は神様見習いだ。  神様と言ったって見た目はそこいらの人間と変わらない。ちょっとばかり人間より融通がきくだけだ。  ご主人はどう見たって、そこいらの悪ガキ共と同じにしか見えないし、目の前の主神だって威厳はあるけどただのじいさんだ。  ご主人はある罪を犯した、世界から『好き』というものをなくした。
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