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人々から何が好きという物はなくなり、好きな物をめぐり、争うことはなくなり戦争、紛争は消えた。
そしてそれは、同時に人々から、希望ある未来さえも奪った。
好きなことは消え、努力することがなくなってしまったからだ。
それをやった、ご主人は深く考えた訳ではなく、ちょっとした親切心からの行動だった。
「神様こんな思いをするならいっそ世界中の好きをなくして下さい」
その少女は、よく笑う少女だった、その少女が笑うと大輪の花が咲いたように、周りが明るくなった、ご主人はその少女が笑っている姿が好きだった。
平たく言えば惚れてるのかな?
ご主人はその笑顔が曇ってしまうくらいならと、その少女の願いを叶えた。
片思いに悩む少女の願い、ずっとこのまま片思いならいっそ、この想いすら消してほしいと言う、真摯で悲痛な願いを。
「その願い、叶えよう」
声に威厳を込めご主人が言う。
「え?」
少女が何事かと辺りを見回した時にはもう、後の祭りだった。
「ご主人? いくら何でも『好き』をなくすってのはどうかと、思うよ? 感情が……好き嫌いがなくなればそれはただ、反射で生きてるだけだよ?」
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