なくしたことば

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「生きてますか?」 「んん、うるせえぞラック!」  ん~何? オイラ何も言ってないよ?  オイラはご主人の懐で丸まって寝ていた。  横抱きにされた形のままご主人を見ると、目をつぶったままだった。  寝言かと思い二度寝する。 「生きてますか?」  また、声が降ってきた。  安否を気づかうというよりは、本当に生死の確認しているだけのような、感情を覗かせない冷めた声だ。  ん、誰? ご主人じゃないぞ?  ご主人の懐から這い出て声の主を見上げる。  女の子だ。年の頃は十二、三歳くらいかな?  春の朝日を浴び、黒曜石のように艶々と髪が輝いていた。  肩より少し長い髪は左右で三つ編みにされている。  質素な服から伸びる手足は健康的に日焼けし、その姿は後ろに広がる草原と相まって、活発な印象をオイラに与える。  それにしても、この娘どっかで見たような? 「邪魔なんですけど」  女の子が小枝でご主人をつつきながら言う。  あっ、この娘はあの時の――  そうだ、ご主人が願いを叶えたあの娘だ。  あの時見た印象と、今の印象が全然違うから分からなかったんだ。
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