Chapter1

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テレビのニュースを観て、小言をもらしながら夕食を楽しむ彼女。 この心配性な女性は小沢夕日(おざわ ゆうひ)、僕の義姉である。 身長が150センチほどで、よく中学生…ひどいときは小学生に間違われる。 柔らかいふわふわな金髪ショートヘアの21才だ。 僕に対して極度の過保護、分かりやすく言えばブラコンだ。 だが、こんな姉貴に僕は一生かけても返せないほどの恩がある。 両親は幼い頃に離婚し、僕は父に引き取られた。 そして今から七年前に、姉貴のお母さんと再婚し、僕と姉貴は義理の姉弟になった。 だが、その一年後に両親は交通事故でこの世を去った。当時9才と15才だった僕と姉貴を残して…。 それからというもの、まだ中学生だった姉貴は僕を一生懸命育ててくれた。 炊事、洗濯、掃除、僕も手伝ったが、それ以上に姉貴は頑張った。 初めは両親が残した貯金で生活をしていたが、「自分たちの生活費は自分たちで稼ぐ」と、姉貴は高校受験を諦めて就職した。 ならばせめて、と僕は家事を全てやることにした。 奈央や健介が色々と助けてくれたので、なんとかなった。 姉貴おかげで中学、高校と進学でき、僕が高校に入学すると同時に、幼い頃からの夢だったらしい看護師の資格をとり、現在は市内の病院に勤務している。 そんな訳で、僕は姉貴に本当に感謝しているのだ。 「そうだ!護身用にナイフを持ち歩くとか…あ、スタンガンもいいわね」 …さり気なく物騒なことも言いますが。 どうして食事中にこんな話をしているのかといえば、7時のニュースで殺人事件の速報が流れていたからだ。 現場はいつもバスで通る道の裏路地。 確か今朝、小さい女の子とチンピラを見た辺りだった。 被害者は身元不明の人間が三人ほど。 身元が判らなくなるほど体がバラバラにされており、検死の結果から推測すると刃物による切断ではなく、あちこちが握り潰れたようになっていたらしい。 まるで、恐ろしいほどの握力によって潰されたかのように…。
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