Chapter1

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▼ 正直者には福がある。 そんな言葉を小さいころに聞いたことがある気がする。 だから僕は自分に正直に生きてきた。 嫌なことは嫌だと言うし、嬉しいときは素直にありがとうと伝える。 そうすれば良いことがあると信じていたから。 しかし成長していくにつれ、人間生きてくためには嘘も必要だと学ぶ。 まあ一般的に考えて当然だが、僕がそれを自覚したのは少しばかり遅かった。 ゆえに、突然の質問などには反射的に思った通りのことを答えてしまい、大変なことになる時がしばしばある。 僕、小沢祐(おざわ たすく)十六才は現在進行形でそれを実感している。 そう、まさに今…。 「うふふふふ…つまりくーちゃんはこのアタシの偉大なるヘアーは以前の方が良かったと仰るのでゴザリザマス?」 「サムライとブルジョワが融合してる!?と、とにかく落ち着いて…」 「キャビアは日本刀で食べるでザマス」 「怖いよ!上流階級とはいえ銃刀法違反は免れねーよ!!」 「うーほっほっほっ、お黙り大貧民!」 「ゴリラみたいな笑いを……あたたた、アイアンクローは勘弁して…あ、あ、なんか頭蓋骨がミシミシと……健介、ヘルプみー!」 「あー…スマン、俺には無理っぽい」 「冷たい反応しないで!キミと僕は友達だろう?」 「祐、俺たちの友情もここまでだ」 「迷わず即答したなオイ」 登校中のバスの中、満面の笑顔で僕の顔面を締め付ける目の前の少女の名は笹木奈央(ささき なお)。 僕の幼なじみで、昔から無駄にテンションがに高い。 よく見れば、肩まで伸ばした髪が若干茶色に染まっている。 僕との友情をソッコーで否定した男は榎本健介(えのもと けんすけ)。 こちらも僕の幼なじみ。 耳やら鼻やら顔のあちこちにジャラジャラとピアスがくっついており、短く刈り込んだ髪を金髪に染め、筋肉質でオマケに目つきもかなり悪い。 だが、こんな彼は勉強がかなり出来る。 人付き合いも良く、更に生徒会副会長(マジです)。 ここまで見た目と中身の一致しない人間はそういないだろうな。 ちなみに僕の容姿は、身長170センチに穏やかな顔つき(奈央談)、髪は特にいじっていないので黒。 どこにでもいるような高校生だと思う。
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