Chapter1

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▼ 数分後、たくさんの車が行き交う大通りの歩道橋に僕はいた。 手すりに寄りかかる。ビュンビュン車が通る車道を見下ろしながら、ここから落ちたら何回車に跳ねられるかな、なんて思う。 そんなくだらないことを考えながら、幅の狭い歩道橋を進もうとして、ふと後ろに気配を感じた。 振り返ったそこには、小学校低学年くらいの小さな女の子がぼんやりと立っていた。 …こんな時間に塾か何かだろうか? ワンピース姿の女の子は、虚ろな瞳で僕を見ている。 ん…どこかで会ったような…それもつい最近…? と、今朝の光景を思い出す。 あのとき、チンピラ風の若者に絡まれていた白いワンピースの女の子だ。 ただ…記憶と違うのは、彼女が着ているワンピースの色が白ではなく、ベージュのような…いや、どちらかといえば赤黒い色だった。 ツンと、鉄の錆びたような匂いがした。 『危険ダ』 理由は分からないが、漠然と思った。 本能が危険信号を発っしている。 『コノコハ危ナイ』 心臓が早鐘を打ったように、ドクン、ドクンと響く。 突然、女の子は俊敏な動作で僕へ手をのばしてきた。 「うわっ!?」 反射的に後ろへ跳ぶ。 空振りした少女はよろけ、歩道橋の手すりに捕まり、 ゴキャッ その掴んだ部分を握り潰した。 「えっ…」 口をポカンとあける。 状況が理解できない、目の前の出来事に脳がついていかない。 女の子の手から、鉄くずと化した物体がキン、キン、と音を立てて転がり落ち、彼女は何でもなかったかのようにこちらに向き直る。 「あ…」 目が合う。 その表情は年相応の女の子の顔だが、やはりどこか虚ろなものである。 まるで、自分のしていることを理解していないように。
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