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………………。
『リン』
いつまで待っても、衝撃はやってこなかった。
『リン』
…………?
『リン』『リン』
………鈴の…音?
『リン』
ゆっくりと目を開く。
一瞬、その光景を理解できなかった。
僕の視界に入ってきたのは、『崩れた手すりの破片』、『壊されたスタンガンの残骸』、『体中から血を流している先ほどの少女』、そして……
『左の手のひらに鈴を浮かせている金髪の少女』だった。
「え…」
小柄な少女…多分140センチあるかないか。
無表情な顔つきも幼く、11~12才くらいだろう。
そして驚いたことに、金髪少女の左手には金色の鈴のようなモノが、宙にフワフワと浮いていた。
彼女はその『鈴』を掴むと、軽く小石を放るような動作で、それをこちらに放り投げる。
僕の足元には、つい今さっき僕を殺そうとしていた女の子が、血の水たまりに沈んでいた。
彼女の腕や脚は、所々火傷のように爛れ、肉が抉られている。
『鈴』はその女の子の頭部に当たり、
『リン』
透き通った音と共に破裂した。
…女の子の頭と一緒に。
ビクンっ、と頭のない体が震え、数秒の間ピクピク痙攣した後、完全に行動を停止した。
驚いた。
この金髪少女は今、確かに人を殺した…いや…、よく考えれば、この女の子が人間なのかどうかは怪しい所だ。
手すりやスタンガンを素手で粉々にできる小学生なんて普通いないだろう。
それに……
僕は無表情に女の子の死体を見下ろしている金髪少女を見る。
このコは僕を助けてくれた。
金髪少女はテクテクと死体に近づくと、その血まみれの体に触れ、何かを呟いた。
「浄」
すると、たちまち女の子の死体は影のように黒くなって形を失っていき、空中へ霧散してしまった。
「……………」
「……………」
沈黙が訪れる。
唖然とする僕の耳には、歩道橋の下を通る車の音だけが、静かに聞こえてきた。
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