Chapter1

13/23
前へ
/141ページ
次へ
素直に礼を言う、こういうとき、正直にありがとうが言えるのは自分でもいいと思っている。 と、目の前の金髪少女が驚いたように目を見開いた。 その仕草もまた可愛いのだが…… 「アナタ…ありがとう、言った…?」 「え?う、うん…。」 「…………」 金髪少女がもじもじし始める。 無表情な頬に、軽く赤みが差した。 「ワタシ、感謝された、初めて…。」 そう呟くと、口元に微笑を浮かべ、くすぐったそうに目を細めた。 …ホントにカワイイなこのコ。 「ええと…それでさっきの女の子の事で訊きたいんだけど…」 金髪少女は慌てたように無表情に戻ると、首を横に振った。 「企業秘密、忘れる。」 「あのぉ、殺されかけたかけたんで忘れるのは無理かと…」 「ひみつ。」 言い切ると、金髪少女は再び歩き出してしまう。 困った、どうにかして説明してもらわないと気になって仕方ない。 ふと、金髪少女が足元に視線を落としている。 そこには、いつの間にか落としてしまった、中身入りのコンビニ袋があった。 袋からは、姉貴に頼まれたデザートのプリンが覗いていて、彼女の視線はそのプリンに釘付けになっていた。 「プリン、好きなの?」 プリンから目を離さずにコクンと頷く金髪少女。 …ちょっとからかってやろうかな。 「ふふふ…あげてもいいが……欲しければさっきの事を洗いざらい話すんだ!」 期待はしていなかったのでふざけた口調で言ってみる。 すると……… 「…む…仕方ない。」 あっさりOKが出た。 こうして、金髪少女にプリンを与えることを条件に、今、この世界で起きている恐ろしい事を、僕は知ることになったのだ。
/141ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1441人が本棚に入れています
本棚に追加