Chapter1

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「大丈夫!?」 美鈴を覗き込む。 綺麗な顔に、若干の疲労の色があった。 息が荒い。 「美鈴!美鈴!?」 美鈴の口がゆっくりと開く。 「こんなに、話した…初めて、疲れた……。」 …数秒前の心配とトキメキを返してください今すぐに。 「ワタシ、意外と人と、話さない」 「意外でも何でもないけど…」 「タスク、ワタシの初めての…ヒト。」 ポッと頬を赤らめて、上目遣いに言う。 「いやいやいや!僕、美鈴に何か悪いことしたみたいじゃん!」 「責任……」 「はい?」 「責任、とってもらう、から。」 「お前分かって喋ってるだろ!?」 「タスク、罪なオトコ。」 「おまえ何者だぁ!」 「狩人。」 そんなやり取りをしていると、ジャケットのポケットがブルブルと震え始めた。 ケータイだ。 左腕に美鈴を抱えたまま、震えるケータイを取り出す。 画面には『小沢夕日(姉貴)』と表示されていた。 しまった…帰りが遅いから心配してかけてきたのか……ん? そこで、妙な違和感を覚える。 「何でわざわざケータイからかけてんだ?」 自宅にいるならば、普通に家の電話を使えばいい。 つまり…外出している? 首をかしげながらも、とりあえず通話ボタンを押した。 『祐ぅー!アンタ今どこにいんのよー!?』 み、耳がキーンて、キーンてなった…。 姉貴のヤツ…愛しの義弟の聴覚をぶっ壊すつもりか? 「大通りの歩道橋だよ…。てか姉貴こそ今どこにいるの?」 と、 『ウチのマンションの屋上にて緊急事態発生!早く来てくんないと私殺されちゃうんだよ?』 ………は? 『何か光をください光をくださいって連呼する包丁持ったキモイおやじに追い回されてて…』 額に嫌な汗が流れる。 ま…まさか…? 会話が聞こえたのだろう、腕の中で、美鈴がピクッと反応した。 やっぱり『影』か! 内心、動揺しまくっている僕は、意味がないと分かりつつも怒鳴らずにはいられない。 「何で屋上になんか上がったんだよ!?」
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