Chapter1

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▼ 僕と美鈴は、金網のフェンス越しに、夜の十並市の街を眺める。 このマンションの屋上は、市内でもそれなりに高い位置にあるので、街がよく見渡せるのだ。 駅周辺にある市街地の方は、ここ数年の間にずいぶん発展した。 ファミレスにゲーセン、レンタルビデオ店にCDショップ。 裏通りに行けば、ホストやキャバクラ、怪しいホテルや風俗店まである。 (行ったことはないですよ!?) こちらの住宅街とは正反対に、10時を過ぎた今でも明るさを保っていた。 その中ではたくさんの人たちが、様々な想いを胸に生活しているのだろう。 数秒後には自分が「影」にされ、身近な人を襲う怪物にされるかも分からない、そんな状況も知らずに……。 「ねえ美鈴」 「ん」 さっきはあんな事をしてしまい、お互いに気まずい雰囲気だったが、彼女はあまり根に持つタイプではないようで、今は普通に会話が(相変わらず無口だが)できる。 「人間はみんな、無抵抗のうちに「光」を奪われちゃうのかな?」 「『影』、頑張れば何とかなる。でも光喰らいに人間、かなわない。襲われたら、そこでおしまい。」 美鈴は無情に告げる。 その言葉に、僕は沸々と怒りが沸くのを感じた。 彼女に対してではない。 世の中の理不尽さにだ。 美鈴のおかげで、僕は悲しい想いをしなくてすんだ。 でも、世の中にはそうはいかなかった人もいただろう。 自らが「影」になって、大切な人を殺してしまった人もいるかもしれない。 だから、一つの決断をする。 頭に浮かんだことを、そのまま正直に口にした。 「美鈴」 「?」 一度息を吸い、 「僕にもキミの「狩り」に協力させてくれないか?」 「だめ。」 速攻で否定された。
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