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「タスク、もう一度言う。人間、光喰らいにかなわない。」
少し厳しい表情をして、人差し指をピンと立てながら、美鈴は告げる。
「ワタシ、そのための狩人。タスク、大人しくしてる。」
だが僕だって譲れない。
男にも意地というものがある。
…さっき11才の少女に泣きついたなんてのは記憶の彼方、データ削除、忘れましたよ僕は。
「それでも、姉貴のように襲われる人がいるなんてのを、知らないふりして暮らすなんて僕にはできないよ」
「だめ。」
どうしても美鈴は首を縦には振ってくれない。
確かに、彼女も狩人として、一般人である僕を巻き込むわけにはいかないのだろう。
「プリンもう一つあげるから…だめ?」
「ん………だめ。」
間があった
「2つ」
「う……」
表情に迷いが浮かぶ。
もう一踏ん張りか…
「じゃあ奮発して5つで」
美鈴の目が輝いた……気がした。
「……よし。」
力強く、頷く美鈴。
本当に了承しなさった……。
自分で条件出しといてアレだが…何かとてつもなく「狩人」が安っぽい存在に見える。
どうやら彼女の中では、狩人のプライドの優先順位は、プリンより下のようだ。
こうして僕はプリンと引き換えに、命を懸ける争いに巻き込まれていくことになったのだった。
◆【interlude】◆
「じゃあまた明日!」
「ん…」
エントランスの扉から、ニコニコしながら彼は手を振る。
ワタシはそれに頷きを一つ返して背を向けると、彼のマンションを後にした。
マンションが建ち並ぶ、夜の住宅街を歩きながら、先ほどの約束を思い出す。
実際、プリンで協力を許す気など毛頭なかったのだ。
プリンが嫌いか、と言えば嘘になる…それはもう大嘘に。
だが、何も関係のない「人間」を巻き込むわけにはいかない。
そう、考えていたハズなのに。
なぜか彼と一緒に行動することに「楽しそう」という感情を覚え、何を期待したのか了承してしまった。
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