Chapter2

2/38
1441人が本棚に入れています
本棚に追加
/141ページ
これはきっと、見間違いなんだ。 昨日は空席だった、隣の座席を見る。 これは、今朝バス内で奈央にくらった「幸せになれる目つぶし」によって、視力がイカレてしまったのだろう。 そうだ。そうに違いない。 隣の女子の髪が、金髪ツインテールだなんて見間違いだ。 感情の読み取れない表情をしているだなんて見間違いだ。 だから、椅子に座って足をぷらぷらさせているその女の子が美鈴だなんて、見間違いなのだ! ▼ 「家庭の事情により、本校に転入してきた八川美鈴(やかわみすず)さんだ。今日からこのクラスの一員、よろしく頼むぞ」 担任が淡々とした口調で告げ、隣に立っている美鈴に自己紹介をするよう促した。 美鈴は無言でコクリと頷くと、手をもじもじと合わせながら 「…………美鈴、よろし…く。」 と、頬を赤らめて上目遣いに、消え入るような声で呟いた。 「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」 教室の生徒、男女問わずに全てのクラスメートから、歓声が上がる。 「何だあのコ…可愛すぎるだろ!?」 「ヤバ…あの上目遣い強力だ…」 「告る!オレ告ってくる!」 「小学生みたいでカワイ~いー!」 「女同士でも…恋人になれる…わよねぇ…?」 何やら危ない発言も聞こえるが、僕はそのざわめきの中で、心の叫びをあげていた。 演技だ、あの上目遣いは絶対演技だ! そして何故16才の僕と同じクラスに転入してくるんだ!? 僕の記憶が正しければ、美鈴は11才と言っていたハズ…。 「小学生みたい」じゃなくて小学生だよ美鈴は!
/141ページ

最初のコメントを投稿しよう!