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これはきっと、見間違いなんだ。
昨日は空席だった、隣の座席を見る。
これは、今朝バス内で奈央にくらった「幸せになれる目つぶし」によって、視力がイカレてしまったのだろう。
そうだ。そうに違いない。
隣の女子の髪が、金髪ツインテールだなんて見間違いだ。
感情の読み取れない表情をしているだなんて見間違いだ。
だから、椅子に座って足をぷらぷらさせているその女の子が美鈴だなんて、見間違いなのだ!
▼
「家庭の事情により、本校に転入してきた八川美鈴(やかわみすず)さんだ。今日からこのクラスの一員、よろしく頼むぞ」
担任が淡々とした口調で告げ、隣に立っている美鈴に自己紹介をするよう促した。
美鈴は無言でコクリと頷くと、手をもじもじと合わせながら
「…………美鈴、よろし…く。」
と、頬を赤らめて上目遣いに、消え入るような声で呟いた。
「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
教室の生徒、男女問わずに全てのクラスメートから、歓声が上がる。
「何だあのコ…可愛すぎるだろ!?」
「ヤバ…あの上目遣い強力だ…」
「告る!オレ告ってくる!」
「小学生みたいでカワイ~いー!」
「女同士でも…恋人になれる…わよねぇ…?」
何やら危ない発言も聞こえるが、僕はそのざわめきの中で、心の叫びをあげていた。
演技だ、あの上目遣いは絶対演技だ!
そして何故16才の僕と同じクラスに転入してくるんだ!?
僕の記憶が正しければ、美鈴は11才と言っていたハズ…。
「小学生みたい」じゃなくて小学生だよ美鈴は!
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