[20:58] 秋島 祐一

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東京各地で起こっている、謎のテロリストによる市民への攻撃は拡大していた…。   僕は自宅のパソコンでその事を確認していた。 この近辺ではまだ被害は出ていなかったために、どんな状況なのかがよくつかめなかった。   しかし、掲示板ではその実況がされていて、一言一言が実に生々しく書かれていた。   父、母は仕事が休みだったので実家の長野に帰っていた。 だから、両親の事を心配する必要がなかったため、よかった。   だが、僕は東京にいる。 僕自身にいつ被害が来るか、わかったものではないのだ。      <脱出方法はあるのか?>     僕はネットの皆に訪ねた。 そして、十秒も立たないうちに返事が返ってきた。     <東京の周りにはバリケードが張られていて、脱出は難しいと思うぞ>       僕は再度、訪ねた。     <なら、地下鉄からは?>   <無理だ…。 地下鉄はどこも既に占拠されているよ>     これで僕達、東京市民の現状が掴めた。 逃げ道がない。 あの臨時放送で話していた男の言葉が今になって理解できた。   最後に質問に応えてくれた人達に<ありがとう>と送って、僕はパソコンの電源を落とした。 今から生き残る為の準備をしなくてはいけない。     (まずは、身を守るための武器を探さなきゃ…)     僕は台所から、棚に閉まっていた包丁を持った。 大体、25センチ位のどこの家でもありそうな身近な包丁だ。 切れ味も良くはないが、悪くもないと言った所だろう。   僕は武器を確保した後、冷蔵庫からお茶を取り出して、コップに注いだ。 それを一気に飲み干すと、ノートパソコンが入ったリュックサックを背負う。 そして、靴紐をしっかりと結び、玄関のドアを開けた。     「……行ってきます」     久しぶりに言ったこの言葉。 それは誰に言った訳でもなく、ただ自分自身に言い聞かせたかっただけなのかもしれなかった…。              <所持品> ・ノートパソコン ・包丁 ・ ・
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