[21:15] 美鶴 蒼衣

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二階へと駆け上がった私は、ドアが空いていた病室に入りこんだ。 そして、息を殺して、身を潜める。 気づけば、全身が汗で濡れていて、身体が震えだしている 私はこれが死の前に味わう恐怖なんだと思った。   怖い。 頭の中ではその一言が無数になって、駆け廻っていた。 私は殺されるのだろうか…。 ただ逃げ回るだけで、恐怖を抱えたまま、死ぬのだろうか…。     (嫌だ…。 そんな死に方は絶対に嫌だ!)     私は銃を強く握りしめる。     「お父さん… 私に力を貸して…!」     階段を上る足音が聞こえてくる。 テロリストはもうじき、この場所にもくるだろう。 私は決意を決めた。 逃げる事ができないのなら、戦うまでだ。 銃を撃つ覚悟も、自分が死ぬ覚悟も、相手を殺す覚悟もできた。   テロリストの足音がだんだんと近づいてくる。 私はもう一度、銃を構えた。 相手はまだ私に気づいていない。     (撃つのよ。 今撃たなきゃ、こっちが死んでしまう!! 撃って!!!)     私は二度、引金を引いた。     ―――バンッバンッ!     一発目は男の頭部に直撃して、血が吹き出ると同時に男はすぐに地面へと倒れこむ。 二発目、もう片方の男の胸部に当たり、胸を支えながらも、倒れた男の上へと重ねて倒れこんだ。     「はぁ……はぁ……ッ!」     私は生死を確かめるために、倒れこんだ男に近づく。 銃はそのまま下ろさずに構えたまま、頭部から血が溢れ出ている男へと向ける。     「ぅぅ…………ッ!」     口に手を押さえる。 男は誰が見てもわかる即死だった。 その上に寝そべっていた男も確認してみる。 さっきは遠くからでわからなかったが、血は……出ていない。   ということは……。     そこまで考えた瞬間、倒れていたテロリストに足を掴まれた。 バランスが崩れて、地面へと倒れこむ。 手に持っていた銃をテロリストに奪われて、それを遠くに投げられる。     「い、いやぁ!」     テロリストは私の身体の上へと乗った。 マスク越しでは息が荒くなっている。 私が着ていた服を掴み、それを無理矢理破られる。 これから、このテロリストに何をされるか、私は容易に想像がついた。     「…や、やだぁ! 離して!」     私は周りに何か武器がないかと見渡した。
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