[22:05] 美鶴 蒼衣

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一面中花畑。 そんな綺麗な所に私は寝そべっていた。     (あれ? ここ、何処…? 私、なんでこんな所にいるんだろ……?)     先ほどまで自分が何処にいたのか、何をしていたのか思い出せないまま、空を眺める。   本当に何も思い出せない。 私は一体どうしたのだろうか…。 何か、重大な事に巻き込まれていたような……、それは何だろう……。       『…蒼衣……』     ふと、誰かが私の名前を呼んだ。 起き上がって振り返ると、そこには海外にいるはずの父がいた。 普通なら「どうして此処にいるの?」と聞くだろう。 たが、私はあまり気にしなかった。 だって、目の前には普段から会えないでいた父の姿があるのだから…―――     「…お父さん」     父は私に近づき、身体を抱き締めてくれた。     (…お父さん、温かい……)     父の温もりを肌で感じて、安心した私はそっと目を閉じていった…。             そして、目閉じてから、数秒が経った時…。     ―――ピチャッ!     ふいに、水滴の落ちる音が聞こえた。 それが私の顔へと流れ込むように落ちていく。 水にしては妙なほど温かい…。 これは何だろう…。     「………ん…ぅ」  顔に伝う水を手で拭いて、私はゆっくりと目を開けた。     「……お父…さん?」     さっきまで、私を抱き締めてくれた父の姿がない。 風景も先ほどとは違い、辺り一面の花も消えている。   これは……一体…なんだ…。   次に自分の視界に映ったモノに私は驚愕した。     「……ぁ……ぁ…あ…」     さっき、額から垂れてきた水を拭いた手を目にした。 手についていたのは、水では……ない。 私が勝手に水と思い込んでいたそれは……、 真っ赤な……、 それでもって、温かい……、            血だった…。    
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