[22:05] 美鶴 蒼衣

3/6

44人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
  記憶がうっすらとだが、だんだんと蘇ってくる。     (そう…だ…私は……)     その時、背後から、また違う誰かの声が聞こえてきた。     『刺サったナイフ、痛かッたゾォ』     トーンの低い男性の声と同時に私は誰かに身体を引き寄せられた。     (冷たい…   誰……? お父さん……?)     だが、それは父ではなかった。   それは…   私が殺したはずのテロリストだった。     胸から大量に血を溢れ垂らしながら…。 私をそっと抱き締めようとする。 テロリストの左手にはナイフが持ってあり、それを私の胸元へと軽く押していく。     「嫌……いやぁ……!」   「怖イだロ……俺モ怖かッタんだヨぉオオオーー!」     テロリストの男は既にまともな顔をしていなかった。 ナイフが胸元の直前へと迫ってくる。        「……嫌…いやぁ……いやぁーーッ!   助けて……誰か……!   お父さん……、お母さん……。   ア…アア…グ……ァ……」     私の悲痛の叫びと同じにナイフが胸元へと入りこんできた…。 血が身体から、ポタッ、ポタッ、と零れ落ちる。     「いヒ…いひヒヒぃィィッ!!」     男は狂気染みた笑みを浮かべている。 私の身体には苦痛がじわじわと染み込んでいった。     痛…い……。   痛い…痛いイタイイタイイタイ…。     痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い…。       「イヤァアアー…ッ…ア…ア…ア……」       私は地獄へと堕ちていく…。       ――――――――   ―――――   ――…    
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

44人が本棚に入れています
本棚に追加