[22:05] 美鶴 蒼衣

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  ―――バタンッ!     その時、入口の向こうの方から扉の開ける音が聞こえた。 誰かがこの学校に侵入してきたのだ。 私はすぐに隠れて、侵入者を確認する。   上はジャージで下はジーパンという、ラフな格好をしていた少年がいた。 私よりも一歳、二歳くらい年が幼く見える。 どこからどう見ても、明らかに一般市民だ。 少年は膝に手を当てて、苦しそうに息を切らしている。 ここまで走ってきたのだろう。 少年の状態からして、テロリストに追われていたのかもしれない。 私はこの少年の傍へと近づいて行った。 少年は私の気配に気づき、強ばった顔をして警戒した。     「…ハァ…ハァ……ッ。 来るな! テロリスト!!」   「……え?」     (テロリスト……? 私の事…なの?)     私はそう思いながら、自分の今着ていた服装を見て、彼が言った事を把握した。 今、私が着ていた服はテロリストから奪ったモノだ。 確かに……。 これではテロリストに間違えられても仕方ない。     「違う! 私はテロリストじゃないよ! この服は…―――!」   「そうやって、安心させておいて僕を殺すんだろ? それくらい、わかってるよ…」     少年は私の言う事を信じてはくれない。 この少年はここまで逃げてくるのに相当な数のテロリストに追われていたのだろうか…。 だから、孤独と不安に覆いつくされて、自分以外を信じる事ができなくなってしまったのだろうか…。     「…………」     私は少年へ近寄って行った。     「ッ! 来るな!!」     少年はポケットから包丁を取り出して、それを私の方へと向ける。     「それ以上近づいたら、刺すぞ!!」     少年は、もうすぐ傍まで近づいていた私を敵意の目で見ていた。 多分、近づいたら本当に刺す気なんだろう。 けど、私もここで引き下がってはいけない。   私は手に持っていた銃を全て床に置いた。     「な…ッ…―――!」     少年は呆気のない顔をした。     「これでもう怖くないよね?」   「くっ…くるな!」  
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