[20:30] 高野 智基

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あの臨時放送から何分が過ぎただろうか。   仕事が終わり、俺は優子との約束で、待ち合わせの場所へと向かっていた。 優子は俺の婚約者だ。   彼女と付き合って、三年目。 俺は優子にプロポーズをした。 優子は最初は驚いていたが、俺の真剣な顔を見て、「少し考えさせてくれる?」と返事をくれた。 その一週間後、優子が俺の家に訪ねてきた。 そして、「私も智基と結婚したい」と照れながら、話してくれた。 その後、凄く喜んで優子を抱き締めたのは、今となっては少し恥ずかしい。                           「もうすぐか…」     タクシーで、会社から10分。 俺は待ち合わせの噴水に来ていた。 この場所は、俺達が始めて会った場所で、以来待ち合わせ場所と言ったら、もうここだけとなっていた。   この時間帯にもなると、周りには人がいなくなる。     (優子の奴、もう来てるかな)     腕を捲り、時計を見た。 時間は8時30分。 待ち合わせの時間まで、まだ十分もあった。 少し着くのが早かったか…。 俺はすぐ傍にあった、 ベンチに腰掛けようと…―――           『―――キャァァァァー!』         女性の悲鳴が公園内に響き渡った。 そのすぐ後に『バンッ』と重たい音が鳴り響いた。 最後に聞いた、あの音。 銃声に聞こえたが…。   俺は気になって、女性の悲鳴と銃声が聞こえた方へと向かっていった。 向かって行く途中、今度は複数の悲鳴が聞こえては、その度に『バンッ、バンッ』と銃声が聞こえた。 俺は自分の心に少しずつだが、不安が集まってくるのを感じていた。 その不安を振り払いながら、そこへと走り始めた。    
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