みにくい7匹の子やぎ

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この湖のほとりを、取り囲むように落葉樹の森と林が広がっている。森と林の違いはヒトが手を加えていないか、あるいは逆か、だ。この森に透明の糸で継ぎ足したようにある林は、やぎたちにとってそれは森に相違なかった。彼ら以外のヤセイの生き物たちにとっても同様である。 ここ数年彼らの食料となるものは徐々に減りつつあった。早い時点からそれに気付いたおすやぎは色々と考えを廻らせたが、答えは滝の中へ落ちていった。 めすやぎのお腹に仔やぎがいるコトを理解してからというもの、おすやぎは見つけた食べ物をめすやぎに与えるようにした。「もういいわ」と言われても、おすやぎはなるべく多くの木の実やらをめすやぎに勧めた。 林が"作られ"始めた頃ヤセイの動物達は林に踏みこむことはしなかった。しかし食べ物も少なく、ヒトもたまにしか立ち入らない林は、森としての存在を確立するに充分すぎるほどだった。 おすやぎのように代々、林の話を聞かされるやぎやヤセイの生き物はそこまで多く無かった。実際、その話を聞いていてもおすやぎには林と森の境目すら曖昧にだったし、週に1度や2度、透明なケバケバした縫い目を越え、あてもなく食料を探し歩いていた。
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