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『私は人に手折られたくない。
私はここにいたいのです』
ふるふると震える小さな花は、さらに小さくなっています。
『愛でられるなら、私は手折られてもかまわない。
私は花です。
花は安らぎを与える為に生まれるのではないのですか?』
春紫苑の問いに、青い花はいやいやと花を振りました。
『たとえその為に生まれたのだとしても、私はここにいたいのです』
何故と再び問う春紫苑に、青い花は春紫苑よりさらに上を見ます。
『あれを見てください。
あの葉の陰に見える小さな蕾を。
私はあの花が咲くのを見てみたいのです。
あの白い蕾が、どのように咲くのか知りたいのです』
青い花の言う通り、後ろにそびえる高い木の枝先に、とても小さな白い蕾が見えました。
春紫苑は、この木がなんの木だかわかりません。
花がどんな花かも知りません。
青い花の言う通り、どんな花が咲くか少々気になります。
ぼんやりと眺めていると、青い花がぽつりぽつりと話を始めました。
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