力の使い方

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  こんな力、別に無くてもよかったのに…。 「おい、早くおはぎ!」 「あ、う、うん」 金澤さんは空になったお弁当箱を突き出す。 僕はそれを受け取り、おはぎの入った箱を金澤さんに渡した。 朝早くから作った特製おはぎだ。 金澤さんはそれを夢中で食べる。 「うめぇー!お前マジ料理だけは最高だな!」 「あはは…」 料理だけ、だよねぇ…。 まぁそれだけでも十分かな。 金澤さんはぺろりとおはぎを平らげた。 口の周りには小豆が付いている。 「金澤さん、小豆付いてる」 「んあ?」 僕は金澤さんの口の周りに付いている小豆を取り、食べた。 すると、金澤さんの顔が赤くなる。 「…バッ…て、テメェ、どこに付いてるのか言うだけでいいんだよ!!」 「え、でも…あ、まだ付いてる」 「だから自分で出来るって!!」 僕がタオルで拭こうとすると、金澤さんがそれを奪い取った。 …やってあげるのに。 『ちょっと相良』 また制服が喋る。 僕は小声で「何?」と聞いた。 『レディに対してそんな子供扱いは駄目でしょ! それも金澤さんみたいな不良には、普通殴られてるわよ!』 「どうして?」 『馬鹿にしてるみたいじゃない!』 「…僕、そんなつもりじゃなかったんだけど…」 『有難迷惑ってやつよ!』 「そっか…気を付けるよ」 「あいよ、返す」 「あ、うん」 金澤さんからタオルを受け取り、鞄に直す。 別に怒っているようには見えなかったので、安心した。 嫌われて…ないよね…。 金澤さんに嫌われたら僕…。 想像するだけで泣きそうになって、僕は目を擦った。
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