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その時調度、チャイムが鳴った。
もう行かないといけない。
僕は立ち上がった。
「じゃ、じゃあね、金澤さん」
「おー」
金澤さんはこっちを見ずに手を振るだけだけど…そんな仕種ですら嬉しい。
僕は教室に戻っていった。
虐めが軽くなった教室は、大分マシだった。
金澤さんには、ホントに感謝してるんだ。
お礼を言ったら怒るから、言わないけどね。
帰り道、僕は家の駅近くのデパートに来ていた。
二階のお菓子売場で、明日のデザートを考える。
今日はおはぎ、昨日はようかん、一昨日は水饅頭…。
うーん…。
うろうろしていると、鮮やかな緑が目に入った。
抹茶カステラだ。
カステラは和菓子じゃないけど、抹茶だったら金澤さんも喜んでくれるかな。
「すみません。これ一本下さい」
「はい、畏まりました」
一番小さくて細いやつを買う。
プロの味を盗め、だ。
カステラなんて初めて作るなぁ。
金澤さん、喜んでくれるかな。
すると突然、悲鳴が頭の中に響いてきた。
『痛い、痛い!!』
えっ、な、何…?
『割れる、割れちゃうよう…!!』
ずっと悲鳴を上げる声は、上の方からだった。
多分…レストランが沢山ある階だ。
僕は人気の少ないところに行き、壁に小声で話しかけた。
「誰が、誰が苦しんでるの?」
『7階のガス管なんだ!!』
「が、ガス管!?」
ま、まさか…!!
『伏せて!!』
激しい轟音が、鳴り響いた。
ガラスが、電灯が割れ、建物が大きく揺れる。
人々と、物達の悲鳴が頭にこだましていた。
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