力の使い方

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  そして、非常ベルが作動した。 人々は混乱し、逃げ出す。 「皆さん、落ち着いて下さい!とにかく、非常階段から避難しましょう!」 店員さん達がお客さんを誘導する。 僕は壁に寄り掛かり、激しく高鳴る心臓を落ち着かせようと必死だった。 い、嫌だ…。 建物が痛いって叫んでる…。 熱いって、泣き叫んでる…。 『相良、早く逃げないと!』 「う、うん…」 僕はよろめきながら、人の波に加わっていく。 やっとの思いで外に出ると、崩れた瓦礫が落ちていた。 そして、7階の当たりが燃えている。 『ギャハハハ!!燃えろ燃えろー!!』 『熱い、熱い熱い!!痛いよう!!』 火と建物が叫びあう。 僕はただ、それを見上げるしかなかった。 消防車が到着し、ホースで水をかける。 「皆さん、危険ですので下がって下さい!!」 『んなへぼい水なんかで消えるかよ!バーカバーカ!』 人と物の声が混ざって頭が痛くなる。 もう嫌だっ…。 聞きたくない…!! どうして僕だけこんなのが聞こえるんだよ! どうして僕だけ、こんな…!! 耳を塞ごうとしたその時 聞いたことのある声が、僕の頭に響いた。 『根暗くん、そこにいるんでしょ!?』 「…えっ…?」 それは… 「おい、見ろ!!屋上に人が沢山残されてるぞ!!」 金澤さんの、制服の声だった。 …えっ… どういうこと…? 僕はただただ、混乱するしかなかった。
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