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『パン焼けたわよー』
『バターも塗っておいたから』
『牛乳も入れたよー』
「ありがとう、みんな」
座ろうとすると椅子が動く。
座ると、椅子が前に動いた。
「いただきます」
朝ご飯を食べ終えると、雀達にもパンをあげる。
そして鞄を掴み、靴を履いた。
「行ってきます」
今日も憂鬱な一日が始まる。
蹴る、殴る。
暴力。
もう日常茶飯事で、僕は屋上に横たわりながら、空を見上げていた。
全身が痛い。
『相良…』
「…ごめんね。いつも汚しちゃって。それに、痛かったよね。ホント…ごめん」
『ううん、いいの。私は直せるわ。でも相良が…』
「僕だって治るよ。君達とは違って、放っておけばね」
むくり、と起き上がる。
全身に激痛が走った。
「容赦ないなぁ」
『ねぇ相良。やっぱり病院に…』
「だって理由話しにくいし、母さんにも迷惑かかるし…大丈夫だよ」
「おい」
「何?」
あれ?
初めて聞く声だなぁ。
どれだろ。
床?フェンス?
「お前、殴られすぎて頭おかしくなったのか?」
「ううん、一応正常だよ」
「嘘つけ。今独り言してたぞ」
「独り言?」
何で独り言なんて言うんだろ。
僕は今制服と喋ってたのに。
…。
ま さ か 。
バッと後ろを振り向くと、タンクに背を預け、煙草を吹かしている真っ赤な長い髪が見えた。
短いスカートから覗く長くて白い足。
制服の下に黒のキャミソールを着ていて、シャツを全開にしている。
ピアスもアクセサリーもいっぱい付けていて、薔薇の入れ墨をしていた。
か、格好良い…。
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