始まり

4/7
6218人が本棚に入れています
本棚に追加
/94ページ
  『パン焼けたわよー』 『バターも塗っておいたから』 『牛乳も入れたよー』 「ありがとう、みんな」 座ろうとすると椅子が動く。 座ると、椅子が前に動いた。 「いただきます」 朝ご飯を食べ終えると、雀達にもパンをあげる。 そして鞄を掴み、靴を履いた。 「行ってきます」 今日も憂鬱な一日が始まる。 蹴る、殴る。 暴力。 もう日常茶飯事で、僕は屋上に横たわりながら、空を見上げていた。 全身が痛い。 『相良…』 「…ごめんね。いつも汚しちゃって。それに、痛かったよね。ホント…ごめん」 『ううん、いいの。私は直せるわ。でも相良が…』 「僕だって治るよ。君達とは違って、放っておけばね」 むくり、と起き上がる。 全身に激痛が走った。 「容赦ないなぁ」 『ねぇ相良。やっぱり病院に…』 「だって理由話しにくいし、母さんにも迷惑かかるし…大丈夫だよ」 「おい」 「何?」 あれ? 初めて聞く声だなぁ。 どれだろ。 床?フェンス? 「お前、殴られすぎて頭おかしくなったのか?」 「ううん、一応正常だよ」 「嘘つけ。今独り言してたぞ」 「独り言?」 何で独り言なんて言うんだろ。 僕は今制服と喋ってたのに。 …。 ま さ か 。 バッと後ろを振り向くと、タンクに背を預け、煙草を吹かしている真っ赤な長い髪が見えた。 短いスカートから覗く長くて白い足。 制服の下に黒のキャミソールを着ていて、シャツを全開にしている。 ピアスもアクセサリーもいっぱい付けていて、薔薇の入れ墨をしていた。 か、格好良い…。
/94ページ

最初のコメントを投稿しよう!