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煙草の灰を落とす姿も様になっている彼女は、この学園一の不良――金澤 唯(カナザワ ユイ)さんだった。
金澤は白い煙を吐く。
「人が一服してんのに、うっせぇんだよ」
「…あ…ご、ごめんなさい…」
「チッ…。テメェみてぇな弱々しい野郎は大っ嫌いなんだよ」
それは…すみません、どうしようもないです。
「だいたい、何でやり返さねぇんだ?だからあいつらが調子に乗んだよ」
「そんな…人を傷付けるなんて…」
「ハア?何甘ったれたこと言ってんだよ」
ぐりぐりと壁に煙草を押し付け、僕の元に歩み寄り襟を掴む。
金澤さんは、薄い眉を寄せ、僕を睨み付けた。
カラーコンタクトを入れ、赤くした瞳が真っ直ぐに僕を見る。
「んな偽善振りは捨てろ。さもねぇと…オレがテメェを殺すぞ」
殺気…というのだろうか。
そんなものが感じられ、僕は思わずゾクリとした悪寒を走らせた。
す、凄い気迫…。
「テメェを見てると、イライラすんだよ」
「…あの、さ」
「ア?何だ文句あるみてぇじゃねぇか。言ってみろ」
お許しを貰ったので、僕は思ったことを口にすることにする。
「金澤さんって、美人なんだね」
「…は…?」
金澤さんが、初めて間抜けな声を出す。
目を見開き、呆然とする彼女に対し、僕はにっこりと笑っていた。
「僕、金澤さんの顔を間近で見たの初めてだったからさ、今気付いたよ。
睫毛も長いし、肌も綺麗だし、鼻筋も通ってるし、目付きは悪いけど、凄く美人だよ」
金澤さんは、口を開けたままポカンとしていた。
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