6219人が本棚に入れています
本棚に追加
/94ページ
朝、僕は目覚ましくんより先に起きる。
制服にも自分で着替え、テキパキと手際よく準備をしていた。
それを見て、みんなが目を丸くする。
『熱でもあるのかよ?』
『具合悪いの?』
「…失礼だなぁ、もう」
僕は口を尖らせる。
『じゃあ、何か良いことあった?』
僕はそのテーブルの問いに、にっこりと微笑む。
「うん」
学校が、楽しくなるようなことなんだ。
その笑顔を見て、制服が笑っていたので、ちょっと抓っておいた。
僕が、学校が楽しくなった理由はというと、
「…何ニヤけてんだよ気色悪ィ」
「えへへ。ごめんね」
僕の手作り弁当を食べながら睨む金澤さん。
赤いお箸の先には、たこさんウィンナーが刺さっていた。
あれから、僕たちは結構長い時間を共に過ごすようになった。
金澤さんがいれば僕に近付く人はいなくなるし、金澤さんも暇つぶしの相手になるって、多少嫌がりながらも一緒にいてくれた。
だからお礼に僕がお昼を作ってるんだ。
おやつ付きでね。
金澤さんはたこさんウィンナーを口に入れる。
「んで、今日のデザートは?」
「おはぎだよ」
「おはぎ!でかした!」
金澤さんは嬉しそうに笑う。
最近知ったんだけど、金澤さんは和菓子が好きらしいんだ。
だから僕は和菓子を作る。
だってその笑顔が見たいから。
恋…に近いのかもしれない。
でも僕と金澤さんじゃあ不釣り合い過ぎるにもほどがある。
だからこの気持ちを押し込める。
…友達。
それで十分。
最初のコメントを投稿しよう!