第二話~殺戮のチェスゲーム~

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「いいんです。敵様も必死でしょう。あそこに籠城されては、向こうの三倍兵力が欲しいですねぇ。ですが皇帝閣下と右腕聖剣士さんはケチですからね。送ってくれません。落とすのに軽く一週間はかかります。向こう側ではフェーンを壊滅寸前にまで追い込んでるというのに……」 「包囲して兵糧が尽きるのを待つ時間は我々にはない。どうする気だ?グラウスへの侵攻が遅れれば、下手すればこのプリズンで我々は釘付けにされてしまう。シャーベロスからの援助は期待出来ない。彼等の半分は祖国派だからな――」 ラッシュはそう言葉を並べてハウザーの顔を覗く。だが、ハウザーの綺麗な唇の片端が割れて歯が見えた時ラッシュの顔は曇った。 そう。ドラグートの下界作戦を裏で支援しているのはシャーベロスの一部。ここにいる兵士達の30%がシャーベロス籍。そうするように裏工作したのがハウザー。 彼はこの大戦後の彼等を支援次第で養護する約束を取り付け、ドラグート派を増大させてクーデターをさせた。そしていまやかの地では内戦状態。不足してる兵士や兵器はシャーベロスからの支援で埋めていた。  そうするようにしたのが全てこの男。 そして策略家である彼はさらにまた何か、裏で考えを引き出そうとしている。 「……通常チェスというのはどんなに駒があってもキングが倒れればゲームは終了。取った側が勝利となります」 「あぁ、そうだが?」 突然チェスの話を繰り出したので、取り合えずラッシュはハウザーの考えを探るために話題に食い付く。 「死神君は言いました¨ゲームとは面白くするために掟がある¨のだと……」 「何が言いたい」 ハウザーの語りにラッシュの眉間にはしわが寄っていた。ハウザーは手を後ろに組胸を張る。 「面白くなくなったんで、ここでズルをします♪」  
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