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「――ブライド!私ね!実は結婚するんだぁぁあ!!」
「ケ、ケッコン!?誰とだよ!」
世界の何処かにいるブライドと呼ばれた少年はそう目の前の少女を前にして、叫んだ。それに動じることなく少女はご機嫌なのか、鼻唄一つで聞き流していた。
記憶は定かじゃない。思い返してみるがまったく情景が思い浮かんで来ないのだ。
一人むんむんと思考に浸っていると、いつの間にか場が神聖なる教会へと移っていた。先程言われた言葉が頭の中を反響している中、キョロキョロとブライドは人で溢れる辺りを見渡す。どうやら自分だけが浮いてるようだ。
すると誰が後ろから肩を叩いた。
「よっ!久しぶりだな!」
「お、お前はクヴァル!?」
「ん?どうした?俺はティナ姉ちゃんが結婚するからお祝いに来たんだぜ?弟よ」
「弟!?はぁ!?何がどうなってんの?だってお前ちょっと前まで敵だったじゃ――」
と今までの思考が一気に崩れさってしまうと、信じられないかのようにして赤髪の青年を指さした。しかしそのニコニコ顔は更にブライドを崩壊する。
振り返って逃げ出そうとするが誰かがそこに立ち塞がっていて、通ることが出来なかった。そして目を開けると今度は後退りをした。
「な、なんで……」
「なんでとは心外ですよ!一緒に女追い掛け回した仲じゃないッスかぁ!アニキィ!」
青髪の青年はそう満面の笑みを浮かべると、ブライドは固まった。
一体何が……
「はい皆さん!静粛に!これから誓いを立ててもらいます!」
突然声が教会内で響きわたると、喋っているのは……
「……白い飛竜を肩に乗せた赤髪少年――」
ブライドは逃げるかのようにして視線をずらすと、いつの間にか場内の光が全て落ち、目の前にはスポットライトに立つ三人の姿があった。
「あなた達は永遠の愛を誓っちゃうのかな!?ティナちゃん!ラッシュくん!」
「ハイ……誓います」
「……この身に代えても……」
訳も分からないが遠くで見ているブライドの心にヒビが入った。二人を挟むかのようにして喋っているのは紛れもなくコスプレが大好きなオヤジ……
「では誓いのキスを……していちゃつきましょぉお~」
次の瞬間光が完璧に蘇り、気付けば観衆が賑わいを立てていた。上からは一匹の憎らしい飛竜が花びらを巻き散らしていた。
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